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AI活用

生成AIに何を入力していいか、中小企業が守るべき情報の扱い方

・読了目安 約9分

監修: 株式会社Omit 代表取締役 末吉 孝臣

この記事の要点

  • 個人データを含むプロンプトを本人の同意なく入力し、応答以外の目的で取り扱われると、個人情報保護法違反になる可能性がある
  • 生成AIに入力した情報は、サービスや契約プランによって機械学習に使われるかどうかが異なる
  • 情報セキュリティ10大脅威2026では、AIの利用をめぐるサイバーリスクが組織向けの3位に初めて入った
  • 省力化投資に取り組んだがAI活用はしていない事業者では、AIを使わない理由として社内ルール・ガイドラインの未整備(26.2%)がセキュリティ不安(14.5%)を上回る
ノートパソコンのそばに置かれた南京錠のオブジェ

「取引先とのやり取りをChatGPTに整理してもらった」「見積書の内容をAIに読み込ませて要約した」。そんなとき、入力する手が一瞬止まった経験はないでしょうか。「この情報、外に出して大丈夫だろうか」という迷いです。

この記事の結論

先に3つ申し上げます。

  1. 入力した個人情報が、AIの学習に使われたり、不正確な形で出力されたりするリスクがあります。 このリスクを踏まえて入力を判断する必要があります1
  2. 本人の同意なく個人データを入力し、応答以外の目的で扱われると、個人情報保護法違反になる可能性があります。 事業者が機械学習に使わないことの確認が必要です1
  3. 入力データの扱いは、サービスや契約によって違います。 AnthropicのClaudeでは、個人向けプランと商用契約とで適用されるプライバシーポリシー自体が別です2。OpenAIのAPIのように、明示的にオプトインしない限り学習に使わないと定めている例もあります3

順に見ていきます。

生成AIに入力した情報は、どこへ行くのか

生成AIサービスとは、質問や作業指示(プロンプト入力)に応えて文章・画像等を生成するAIを利用したサービスのことです1。個人情報保護委員会は令和5年6月2日、この生成AIサービスの利用に関する注意喚起を公表しました1

一般の利用者に向けた留意点として、次の3点が示されています1

  • 入力された個人情報が生成AIの機械学習に利用されることがあり、他の情報と統計的に結びついた上で、正確または不正確な内容で出力されるリスクがある
  • 応答結果は確率的な相関関係に基づいて生成されるため、不正確な内容が含まれることがある
  • 生成AIサービスを提供する事業者の利用規約やプライバシーポリシーを十分に確認したうえで、利用について判断する

生成AIに入力した情報がたどる経路。入力はその場の応答に使われるほか、サービスによっては機械学習にも使われ、他の情報と統計的に結びついた上で出力されるリスクがある

つまり、入力した情報は「その場で消える」わけではありません。サービスによっては、学習を経てほかの場面に姿を変えて現れる経路がある、という前提を持つことが出発点になります。

個人情報を入力するときに、法律上気をつけること

個人情報保護委員会は、個人情報取扱事業者(つまり会社)に向けても注意点を示しています1

  • 生成AIサービスに個人情報を含むプロンプトを入力する場合は、特定された利用目的を達成するために必要な範囲内であることを確認する
  • あらかじめ本人の同意を得ることなく個人データを含むプロンプトを入力し、それが応答結果の出力以外の目的で取り扱われる場合、個人情報保護法の規定に違反することとなる可能性がある。このため、生成AIサービスを提供する事業者が、その個人データを機械学習に利用しないこと等を十分に確認する

言い換えると、**「顧客の名前や連絡先を、業務の目的の範囲を超えて生成AIに入力していないか」「入力した個人データが、応答以外の目的(学習など)に使われないか」**の2点を確認する必要がある、ということです。取引先や顧客の個人情報を含む文書をそのままAIに読み込ませる前に、この2点は立ち止まって考える価値があります。自社のケースが法律に触れるかどうかの判断に迷う場合は、自己判断で進めず、個人情報保護委員会の「個人情報保護法相談ダイヤル」(03-6457-9849、9:30〜17:30。土日祝日及び年末年始を除く)や、弁護士などの専門家に確認してください4

サービスや契約プランで、情報の扱われ方は違う

「機械学習に使われないことを確認する」と言われても、何を見ればよいのか分かりにくいところです。実際には、どの会社の、どの契約で使うかによって既定の扱いが違います。

OpenAIの開発者向け公式ドキュメントによれば、OpenAIのAPIは2023年3月1日以降、利用者が明示的にデータ共有にオプトインしない限り、送信されたデータはモデルの訓練や改善に使用されません3

一方、Anthropicの公式プライバシーポリシーによれば、個人向けの無料・Proプランでは、入力・出力データは既定でモデルの学習・改善に利用されます。学習を止めるには、利用者自身がアカウント設定でオプトアウトする必要があります。商用(Enterpriseなど)の契約には、個人向けとは別のプライバシーポリシーが適用されます2。なお、安全性の観点でフラグが立てられたコンテンツは、オプトアウトしていても学習に利用される場合があるとされています2

なお、ブラウザやアプリで使うChatGPT自体の既定設定については、今回の調査では公式の情報を確認できませんでした。上のOpenAIの説明はAPIについてのものです。使う前に、設定画面と利用規約でご自身で確かめてください。

つまり、同じ会社の担当者でも、個人のアカウントで無料プランを使うのか、会社として契約したプランを使うのかで、情報の扱われ方が変わりうるということです。「うちはAIを使っている」と一括りにせず、実際にどのプラン・どの契約で使っているかを確認することが、判断の出発点になります。

行政も「AIのリスク」を明確に位置づけ始めている

IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が2026年1月29日に公表した「情報セキュリティ10大脅威2026」の組織向けランキングでは、「AIの利用をめぐるサイバーリスク」が3位に初めて選出されました5

情報セキュリティ10大脅威2026(組織編)の上位5位。1位ランサム攻撃による被害、2位サプライチェーンや委託先を狙った攻撃、3位AIの利用をめぐるサイバーリスク(初選出)、4位システムの脆弱性を悪用した攻撃、5位機密情報を狙った標的型攻撃

1位のランサム攻撃、2位のサプライチェーンや委託先を狙った攻撃に次ぐ順位です5。これはランキング上の位置づけであって、被害件数を示すものではありません。ただ、AIの利用に伴うリスクが従来型の攻撃と並べて扱われる段階に入ったことは読み取れます。

行政のガイドライン整備も進んでいます。総務省と経済産業省は「AI事業者ガイドライン」を策定しており、最新版は第1.2版(令和8年3月31日公表)です6。AIの開発者・提供者・利用者それぞれの立場で自主的に検討すべき望ましい行動の考え方を整理した文書で、チェックリストと具体的なアプローチ検討のためのワークシートが付属資料として公開されています6

調査で上位に来たのは、セキュリティ不安より「ルールがない」こと

2026年版中小企業白書に、2019年以降に省力化投資へ「取り組んだ」と回答した事業者のうち、AI活用には「取り組んでいない」と回答した事業者に理由を聞いた調査があります。挙がったのは、1位「活用する業務がイメージできていない」63.4%、2位「活用を推進する人材が不足している」40.0%、3位「社内ルール・ガイドラインが整備されていない」26.2%、4位「セキュリティ・情報漏えいへの不安がある」14.5%の順でした(n=3,888、複数回答)7

この調査の対象の中では、セキュリティへの不安そのものよりも、社内ルールが整備されていないことのほうが上位の理由として挙げられているということです。省力化投資には踏み出したがAI活用には至っていない事業者、という限られた対象の数字ではあります。それでも「危険だから使わない」より先に「何を入力していいか決まっていないから使えない」が来ている点は、自社の状況を見直す手がかりになります。

中小企業基盤整備機構の調査では、AI・IT導入にあたって必要な公的支援として「導入費用などの助成」77.9%(n=1,628)、「導入事例などの情報提供」70.5%(n=1,594)、「従業員向けの教育・研修」67.7%(n=1,596)が挙がっています8。いちばん多いのは資金面の支援ですが、事例と研修がそれに続きます。判断の材料と社内の知識が足りていない、という声だと読めます。

導入時につまずきやすいところ

ここまでの内容を踏まえると、つまずきやすいのは次の2点です。

1つ目は、個人のアカウントと会社の契約を混同することです。 担当者が個人で契約した無料プランのAIに、業務の情報を入力しているケースがあります。個人向けプランと商用契約とでは、適用されるプライバシーポリシー自体が別です2。業務利用を会社として契約したプランに寄せておくと、どの条件が自社に適用されるのかを1か所で確認できます。

2つ目は、「機械学習に使われない」の確認を、事業者に問い合わせずに済ませてしまうことです。 個人情報保護委員会の注意喚起は、事業者が個人データを機械学習に利用しないことを「十分に確認すること」を求めています1。利用規約やプライバシーポリシーを読むだけでなく、不明な点は問い合わせる姿勢が必要です。

まとめと、明日できること

  1. 今、会社の中で誰がどのAIサービスを、どのプラン(個人向け無料か、会社契約か)で使っているかを確認する
  2. 個人情報や取引先の機密情報を入力する前に、その生成AIサービスの利用規約・プライバシーポリシーを確認する。 特に「機械学習に利用しない」ことが明記されているかを見る132
  3. 「何を入力してよく、何を入力してはいけないか」を、まず一枚のメモにする。 先の調査でも、社内ルールの未整備はセキュリティ不安より上位の理由でした7
  4. 総務省・経済産業省のAI事業者ガイドラインのチェックリストに目を通す。 自社の状況を確認するたたき台になります6

情報の扱い方が決まっていないままAIを使い始めると、後から「あの入力は大丈夫だったか」という不安が残り続けます。順番としては、ルールを先に決め、それから使う範囲を広げていくのが近道です。

出典

出典

本文中の番号([1] など)は、下記の出典に対応しています。

  1. [1] 個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」(令和5年6月2日) www.ppc.go.jp ・2023年6月2日 公開 ・2026年9月5日 参照
  2. [2] 総務省「AIネットワーク社会推進会議『AI事業者ガイドライン』掲載ページ」 www.soumu.go.jp ・2026年3月31日 公開 ・2026年9月5日 参照
  3. [3] IPA「情報セキュリティ10大脅威2026」 www.ipa.go.jp ・2026年1月29日 公開 ・2026年9月5日 参照
  4. [4] 2026年版中小企業白書 第2部第2章第2節 www.chusho.meti.go.jp ・2026年4月24日 公開 ・2026年9月5日 参照
  5. [5] OpenAI Developer Platform「Data controls in the OpenAI platform」 developers.openai.com ・2026年9月5日 参照
  6. [6] Anthropic「Privacy Policy」 www.anthropic.com ・2026年9月5日 参照
  7. [7] 中小企業基盤整備機構「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査(2026年3月)調査結果のポイント」 www.smrj.go.jp ・2026年9月5日 参照
  8. [8] 個人情報保護委員会「個人情報保護法相談ダイヤル」 www.ppc.go.jp ・2026年9月5日 参照

よくある質問

Q. 生成AIに入力した内容は、AIの学習に使われますか

サービスや契約の形態によって異なります。OpenAIのAPIでは、2023年3月1日以降、利用者が明示的にオプトインしない限り、送信したデータはモデルの訓練や改善に使われません。一方でAnthropicのClaudeは、個人向けの無料・Proプランでは既定で学習に利用され、止めるにはアカウント設定で利用者自身がオプトアウトする必要があります。どの会社の、どの契約で使うかによって扱いが変わります。使っているサービスの利用規約・プライバシーポリシーと、設定画面を確認してください。

Q. 会社の顧客情報を生成AIに入力しても大丈夫ですか

特定された利用目的の範囲内であれば入力できますが、本人の同意なく個人データを含むプロンプトを入力し、応答以外の目的で扱われる場合は個人情報保護法に違反する可能性があります。生成AIサービスを提供する事業者が、その個人データを機械学習に利用しないことを事前に確認してください。個人情報保護委員会が令和5年6月に注意喚起を公表しています。

Q. 社内でAIを使うための最初の一歩は何ですか

何を入力してよく、何を入力してはいけないかを決めた簡単な社内ルールを作ることです。2026年版中小企業白書の調査(省力化投資に取り組んだ事業者のうち、AI活用に取り組んでいない事業者が対象)では、AIを活用しない理由として、セキュリティ・情報漏えいへの不安(14.5%)より社内ルール・ガイドラインの未整備(26.2%)を挙げる割合のほうが高くなっています。総務省と経済産業省が公表しているAI事業者ガイドラインのチェックリストも参考になります。

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