AI導入で使える補助金、中小企業向けの選び方
・読了目安 約10分
監修: 株式会社Omit 代表取締役 末吉 孝臣
この記事の要点
- AIツール導入の柱は「デジタル化・AI導入補助金2026」で、通常枠の補助額は導入するツールの業務プロセス数に応じて5万円〜450万円、補助率は原則1/2以内
- 「中小企業省力化投資補助金」は設備投資向け。公式の対象説明はIoT・ロボット等でAIの明記はなく、上限額は従業員規模別(5人以下750万円〜101人以上8,000万円)
- 申請にはGビズIDプライムの取得(約2週間)とIPAのSECURITY ACTION宣言(約2〜3日)が事前に必要で、思い立ってすぐには出せない
- 広島県には低利融資の「デジタル投資促進資金」もあるが、対象は県知事の承諾を受けた中小企業者等。融資限度額は2億円で、利率は融資期間に応じて決まる
「AIを使ってみたいが、費用をかけて失敗するのが怖い」。そう考えて動けずにいるなら、先に知っておきたいことがあります。AIツールの導入費用を補助する制度や、設備投資・デジタル化を後押しする補助金・融資が、国と自治体にいくつかあります。ただし制度の名前が似ていたり、対象が微妙に違ったりして、どれを使えばいいのか分かりにくいのも事実です。
この記事の結論
パソコンで使うAIサービスやソフトを入れたいなら「デジタル化・AI導入補助金2026」が国の柱です。設備や生産ラインの自動化まで踏み込むなら「中小企業省力化投資補助金(一般型)」が候補になりますが、こちらは公式の対象説明が「IoT・ロボット等」で、AI という語は使われていません。広島県内であれば、県の低利融資「デジタル投資促進資金」も選択肢になります。事前準備の中身は制度によって違いますが、デジタル化・AI導入補助金2026はGビズIDプライムの取得だけで発行までおおむね2週間かかります。思い立ってすぐには使えないので、検討するなら早めに動き出すのが得策です。
まず、自社は「中小企業者」に当てはまるか
補助金の対象になるかどうかは、まず自社が制度上の「中小企業者」に当てはまるかで決まります。中小企業基本法では、業種ごとに資本金の額(または出資の総額)と、常時使用する従業員数のいずれかの基準を満たせば中小企業者と判定されます1。
- 製造業・その他:資本金3億円以下、または従業員300人以下
- 卸売業:資本金1億円以下、または従業員100人以下
- サービス業:資本金5,000万円以下、または従業員100人以下
- 小売業:資本金5,000万円以下、または従業員50人以下
なお、発行済株式の総額の半分以上を大企業1社が持っている場合など「みなし大企業」に該当すると対象外になります。資本構成に大企業が関わっている会社は、個別に確認が必要です1。
柱になるのは「デジタル化・AI導入補助金2026」
AIチャットボットや業務効率化ソフトなど、パソコン・クラウド上で使うITツールの導入を考えているなら、まず検討すべきは「デジタル化・AI導入補助金2026」です。これは以前の「IT導入補助金」から名称が変わった制度で、中小企業・小規模事業者等の労働生産性向上を目的にしています2。
申請枠は5つに分かれていて、一般的なITツールの導入なら「通常枠」を使います。ほかに、インボイス対応のレジ・受発注システム向けの「インボイス枠」(2類型)、サイバー攻撃対策サービス向けの「セキュリティ対策推進枠」、複数社が連携して取り組む「複数者連携デジタル化・AI導入枠」があります3。
通常枠の補助額は、導入するITツールが対応する業務プロセスの数によって2段階に分かれます。公式サイトの表記では、1プロセス以上で5万円以上150万円未満、4プロセス以上で150万円以上450万円以下です4。この2つは「1〜3個」「4個以上」と排他に分かれているわけではないため、自社のツールがどちらの区分で申請できるかは、IT導入支援事業者に確認することになります。補助率は原則1/2以内です。ただし、補助率が2/3以内に上がる要件があります。令和6年10月から令和7年9月までの間で3か月以上、令和7年度改定の地域別最低賃金を下回る賃金で雇用している従業員が、全従業員の30%以上であることを示した場合です5。「最低賃金に近い水準」ではなく「最低賃金を下回っている」ことが条件で、人数の割合の要件もあります。注意したいのは、物差しになるのが「令和7年度改定の」地域別最低賃金だという点です。対象期間は令和6年10月から令和7年9月なので、期間中の賃金を、あとから改定された額と突き合わせて判定することになります5。
対象になる経費は、ソフトウェア購入費とクラウド利用料(最大2年分)が必須です。それに加えて、機能拡張やデータ連携ツールの費用、導入・活用のコンサルティング費用、導入設定や研修の費用、保守サポート費用もオプションとして対象にできます6。たとえば経理まわりのAI活用なら、請求書処理をAIで自動化する前に、まず確かめたい3つのことで整理したクラウド会計・AI-OCRサービスが候補になります。ただし、対象になるのはITツールとして登録されたソフトウェアの費用です。公式サイトは「1種類以上の業務プロセスを保有するソフトウェアを申請すること(汎用プロセスのみは不可)」としています。共通プロセスには「会計・財務・経営」も含まれるため、経理まわりのソフトウェアがここで外れるわけではありません4。ただし、いま使っているサービスがITツールとして登録されているとは限りません。IT導入支援事業者に確認してください。
設備投資を伴うなら「中小企業省力化投資補助金」
チャット型のAIサービスではなく、現場の作業そのものを省力化する設備を入れたい場合は、「中小企業省力化投資補助事業(一般型)」が選択肢になります。公式サイトは対象を「IoT・ロボット等の人手不足解消に効果があるデジタル技術等を活用した設備」と説明しており、個別の現場や事業内容に合わせて支援する制度です7。ここで注意したいのは、この制度の対象説明に「AI」という語が使われていないことです。AIを使った設備なら当然に対象になる、とは公式サイトからは読み取れません。検討している設備が対象になるかは、公募要領と事務局への確認が要ります。
補助率は中小企業者が1/2(一定の要件を満たすと2/3)、小規模企業者・小規模事業者は2/3です。補助上限額は常時使用する従業員数の規模によって変わり、5人以下は750万円(賃上げ要件を満たすと1,000万円)、6〜20人は1,500万円(2,000万円)、21〜50人は3,000万円(4,000万円)、51〜100人は5,000万円(6,500万円)、101人以上は8,000万円(1億円)です7。デジタル化・AI導入補助金2026より上限額が大きい制度です。
広島県には低利融資の「デジタル投資促進資金」もある
補助金と別に、広島県には「デジタル投資促進資金」という融資制度があります。対象は、ITツール導入による生産性向上、デジタル技術を活用した新ビジネスモデルの構築、外部人材の活用や人材育成のいずれかに該当する中小企業者・組合等で、広島県知事の承諾を受けたものです8。該当するだけでは対象にならず、承諾が要件になります。
融資限度額は2億円(うち新規の運転資金は6,000万円)です。利率は融資期間ごとに定められており、期間が長いほど高くなります。信用保証協会の保証付きの場合、設備資金は3年以内0.8%から10年超1.6%まで、運転資金は3年以内1.1%から7年超10年以内1.7%までです(保証を付けない場合はそれぞれ+0.3%)89。これらは「次の年利率以下とする」と定められた上限で、令和8年4月1日適用のものです。金融情勢により変更されます9。設備投資は返済期間が長くなりやすいので、下限の0.8%をそのまま自社の利率と考えないほうがよいところです。この制度のページにAIという言葉は明記されておらず、対象はDX・ITツール導入全般です。申込みは、取扱金融機関に申込書等を提出し、金融機関の審査を経て県の経営革新課へ申請書が提出される仕組みです8。まずは取引のある金融機関に相談するのが入口になります。
申請前につまずきやすいところ
デジタル化・AI導入補助金2026で特につまずきやすいのが、申請の前提となる2つの手続きです。ひとつは「GビズIDプライム」の取得で、交付申請に必須ですが発行までおおむね2週間かかります。もうひとつは情報処理推進機構(IPA)の「SECURITY ACTION」の宣言で、「★一つ星」か「★★二つ星」のいずれかを宣言し、宣言済アカウントIDを申請時に入力する必要があります。こちらの発行期間はおおむね2〜3日です10。
直近の締切は、通常枠・インボイス枠・セキュリティ対策推進枠が2026年9月29日17時、複数者連携デジタル化・AI導入枠が2026年10月30日17時です。交付決定はそれぞれ2026年11月9日、2026年12月10日を予定しています11。締切の1〜2週間前に動き始めても、事前準備が間に合わない可能性があるということです。なお公募は締切が複数回に分かれており、公式サイトには「確定している募集回のスケジュールのみ公表しております。以降のスケジュールは随時更新いたします」と書かれています11。今回に間に合わなくても次があるかもしれませんが、次の日程が公表されている保証はないため、準備は今から始めておくのが安全です。
申請そのものも、自社だけで完結しません。まず自社の業種や経営課題に合う「IT導入支援事業者」を選びます。そのうえで、その事業者から「申請マイページ」への招待を受け、代表者氏名などの申請者基本情報を入力します。続いて交付申請に必要な情報の入力と書類の添付を行い、導入するITツール情報と事業計画値はIT導入支援事業者が入力します。最後に申請マイページ上で入力内容を最終確認し、宣誓のうえ事務局へ提出する、という分担です10。どの事業者を選ぶかで導入するツールの選択肢も変わるため、早めに複数の事業者に問い合わせておくと選びやすくなります。
まとめと、明日できること
- 自社の資本金・従業員数を確認し、業種区分に照らして中小企業者に当てはまるかを確かめる
- 導入したいのがクラウド型のAIツールか、設備投資を伴う自動化かを整理し、デジタル化・AI導入補助金2026と中小企業省力化投資補助金のどちらを軸にするかを決める(後者は公式の対象説明に「AI」の明記がないため、設備が対象になるかを事務局に確かめる)
- GビズIDプライムの取得を、直近の締切から逆算して今のうちに申し込んでおく
補助金の情報は年度ごとに枠組みや金額が変わります。申請を具体的に進める段階では、公式サイトの最新の公募要領で条件を確認してください。
出典
島根県「中小企業者等」(中小企業基本法第2条第1項に基づく中小企業要件表)(2026年9月4日 参照) ↩ ↩
中小企業庁「デジタル化・AI導入補助金2026の公募要領を公開しました」(2026年3月10日 公開)(2026年9月4日 参照) ↩
デジタル化・AI導入補助金2026 公式サイト トップページ(2026年9月4日 参照) ↩
デジタル化・AI導入補助金2026「通常枠」(補助額)(2026年9月4日 参照) ↩ ↩
デジタル化・AI導入補助金2026「通常枠」(補助率)(2026年9月4日 参照) ↩ ↩
デジタル化・AI導入補助金2026「通常枠」(対象経費)(2026年9月4日 参照) ↩
中小企業省力化投資補助金「一般型」公式サイト(2026年9月4日 参照) ↩ ↩
広島県「デジタル投資促進資金」(2026年9月4日 参照) ↩ ↩ ↩
広島県「デジタル投資促進資金」融資利率(融資期間別)(2026年9月5日 参照) ↩ ↩
デジタル化・AI導入補助金2026「申請の流れ」(2026年9月4日 参照) ↩ ↩
デジタル化・AI導入補助金2026「事業スケジュール」(2026年9月4日 参照) ↩ ↩
出典
本文中の番号([1] など)は、下記の出典に対応しています。
- [1] 島根県「中小企業者等」(中小企業基本法第2条第1項に基づく中小企業要件表) www.pref.shimane.lg.jp ・2026年9月4日 参照
- [2] 中小企業庁「デジタル化・AI導入補助金2026の公募要領を公開しました」 www.chusho.meti.go.jp ・2026年3月10日 公開 ・2026年9月4日 参照
- [3] デジタル化・AI導入補助金2026 公式サイト トップページ it-shien.smrj.go.jp ・2026年9月4日 参照
- [4] デジタル化・AI導入補助金2026「通常枠」(補助額) it-shien.smrj.go.jp ・2026年9月4日 参照
- [5] デジタル化・AI導入補助金2026「通常枠」(補助率) it-shien.smrj.go.jp ・2026年9月4日 参照
- [6] デジタル化・AI導入補助金2026「通常枠」(対象経費) it-shien.smrj.go.jp ・2026年9月4日 参照
- [7] 中小企業省力化投資補助金「一般型」公式サイト shoryokuka.smrj.go.jp ・2026年9月4日 参照
- [8] 広島県「デジタル投資促進資金」 www.pref.hiroshima.lg.jp ・2026年9月4日 参照
- [9] デジタル化・AI導入補助金2026「事業スケジュール」 it-shien.smrj.go.jp ・2026年9月4日 参照
- [10] デジタル化・AI導入補助金2026「申請の流れ」 it-shien.smrj.go.jp ・2026年9月4日 参照
- [11] 広島県「デジタル投資促進資金」融資利率(融資期間別) www.pref.hiroshima.lg.jp ・2026年9月5日 参照
よくある質問
Q. デジタル化・AI導入補助金2026はいつまで申請できますか
通常枠・インボイス枠・セキュリティ対策推進枠の直近の締切は2026年9月29日17時、複数者連携デジタル化・AI導入枠は2026年10月30日17時です。公募は締切が複数回に分かれており、公式サイトは「確定している募集回のスケジュールのみ公表しております。以降のスケジュールは随時更新いたします」と案内しています。間に合わない場合は、次の締切が公表されているかを公式サイトで確認してください。
Q. AIチャットボットや生成AIサービスの利用料も対象になりますか
デジタル化・AI導入補助金2026の通常枠は、ソフトウェア購入費とクラウド利用料(最大2年分)を必須の対象経費としています。個別のAIサービスが対象ツールとして登録されているかどうかは、IT導入支援事業者を通じて事前に確認が必要です。
Q. うちの会社は「中小企業者」に当てはまりますか
業種によって基準が異なります。製造業・その他は資本金3億円以下または従業員300人以下、卸売業は資本金1億円以下または従業員100人以下、サービス業は資本金5,000万円以下または従業員100人以下、小売業は資本金5,000万円以下または従業員50人以下のいずれかを満たせば該当します。
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