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業務改善

「日報の中身」で属人化を見える化する方法

・読了目安 約8分

監修: 株式会社Omit 代表取締役 末吉 孝臣

この記事の要点

  • 直近数週間分の日報を対話AIにまとめて読み込ませると、特定の担当者名にしか出てこない業務や用語を表にできます
  • 中小企業庁の白書は、多能工化に有効だった取組として「従業員スキルの可視化」を最も多く挙げ、マニュアル作成はその次としています
  • 業務の属人化・ブラックボックス化の防止に取り組んでいる中小企業は、5〜6割にとどまっています
  • 表にした業務は担当者本人に「手順が書けるか」を確認してもらうことで、引き継ぎの優先順位が見えてきます
小さな会社の事務所の机に積まれた日報の束に、蛍光ペンで特定の担当者名に印を付けている手元のクローズアップ。人物の顔は写さない

「あの件、〇〇さんじゃないと分からないんです」。備後地域の中小企業の経営者から、こんな言葉を聞くことがあります。特定の担当者が休んだり異動したりした途端に、なぜかその人の仕事だけが止まる。誰の目にも見える形で問題になる前に、日々の日報の中に、その兆候はすでに書かれているかもしれません。

この記事の結論

先に3点お伝えします。

  1. 業務の属人化・ブラックボックス化の防止に取り組んでいる中小企業は、5〜6割にとどまります1 逆に言えば、多くの会社にまだ手つかずの部分が残っています。
  2. 中小企業庁の白書は、多能工化に有効だった取組として「従業員スキルの可視化」を最も多く挙げ、「業務マニュアルの作成・整備」はその次としています2 この記事では、その回答の多さを踏まえて、まず「誰が何をできるか」を把握するところから始める進め方を提案します。
  3. その「可視化」を、日々届く日報の中身から始める方法があります。 直近数週間分の日報を対話AIにまとめて読み込ませ、特定の担当者名にしか出てこない業務や用語を洗い出す、という手順です。

順に見ていきます。

私の見方: 属人化を解消するための AI 導入なのに、AI の使い方が属人化していることがあります。運用をしっかりするか、業務が AI の流れに組み込まれたものをスタッフが使うか。どちらかに分かれます。

属人化に、どれだけの企業が向き合えているか

中小企業庁の2025年版白書は、「従業員への経営理念・ビジョンの共有」「従業員への業績・財務内容・議事録など経営情報の共有」「業務の属人化・ブラックボックス化の防止」への取組状況を尋ねた調査を紹介しています。経営理念・ビジョンの共有には約7割の事業者が取り組んでいる一方、業務の属人化・ブラックボックス化の防止に取り組んでいる事業者は5〜6割にとどまっています1

同じ調査を従業員規模別に見ると、従業員規模が大きな事業者ほど、業務の属人化・ブラックボックス化の防止に取り組んでいる割合が高くなっています1。白書はこの節のまとめとして、属人化からの脱却でボトルネック工程の削減や業務標準化による効率化が期待でき、さらに業務を属人化した従業員の退職等によるノウハウの喪失や業務停滞のリスク防止にもつながる、重要な取組だとしています1

属人化そのものへの向き合い方や、マニュアル作成との関係については、マニュアルが使われない理由と、属人化の棚卸しから始める方法で詳しく扱っています。ここでは、その「棚卸し」の入り口を、日々届く日報の中身から作る方法を取り上げます。

「スキルの可視化」が最も多かった、というヒント

中小企業庁の2026年版白書は、多能工化・兼務化(一人の従業員が複数の業務をこなせるようにすること)を進めることが、業務の属人化防止や業務量の平準化、業務の効率化に寄与すると考えられる、としています2

そのうえで、多能工化・兼務化を進める上で有効だった取組を尋ねた調査結果を紹介しています。回答が最も多かったのは「従業員スキルの可視化」で、次いで「業務マニュアルの作成・整備」、「研修・勉強会等の実施」の順でした2。白書は、これらの取組を推進することが多能工化・兼務化には重要である可能性が示唆される、とまとめています2

つまり、回答が最も多かったのは「従業員スキルの可視化」でした。この記事では、それを踏まえて、まず「誰が何をできるか」「誰にしかできないか」を把握するところから始める進め方を提案します。その把握を、日報の中身から始めるやり方です。

日報の中身から、属人化のサインを拾う

現場に足を運べないときに日報から現場の状況を拾う考え方は、現場が見えない経営者が、日報から拾えることで扱っています。「見える化」の基本的な考え方は、数値は異常を知らせる警報でしかなく、原因は現場に行かないと見えないというものです3。属人化も同じで、「誰かが休むと仕事が止まる」という結果だけを見ていても、どの業務のどの部分がその人にしかできないのかまでは分かりません。

日報はもともと、上司が現場の進捗を確認したり部下の成長に生かしたりするために書かれているものです4。ただ、日報を課している企業は多い一方で、報告する部下は漫然と書き続け、受け取る上司も流し読みしている、ということも起こりがちだと指摘されています4。毎日すべての日報を丹念に読み込むのは、現実には難しい会社も多いはずです。

そこで、直近数週間分の日報をまとめて対話AIに読み込ませ、特定の担当者名にしか出てこない業務や用語を洗い出す、という方法があります。ここから先は、その具体的な手順を見ていきます。

手順: 対話AIで「特定の担当者名にしか出てこない業務」を表にする

まず、直近2〜4週間分の日報を手元にそろえます。次に、それをまとめて対話AI(ChatGPT・Claude・Google Geminiなど、いずれも無料プランがあります567)に貼り、「特定の担当者名にしか出てこない業務や専門用語を、担当者名・業務内容・頻度の列で表にしてください」と指示します。同じ言葉や同じ業務名が特定の担当者の報告にしか出てこない場合、その業務がその人に集中している可能性があります。

日報には、担当者名や取引先名など社外に出せない情報が含まれることがあります。貼り付ける前に、使う生成AIサービスの利用規約・プライバシーポリシーを確認し、可能であれば担当者名を記号や仮名に置き換えてください。この点は生成AIに何を入力していいか、中小企業が守るべき情報の扱い方でも扱っています。

できた表は、それで終わりにしません。表を担当者本人と共有し、「その業務の手順を1行で書けるか」を1行ずつ埋めてもらいます。Notion AI(無料プランあり。AI機能は制限つき8)のような共同編集できるツールを使うと、表の上でやり取りを進めやすくなります。手順が書けなかった行は、その担当者がいなくなったときに困る度合いが高い業務です。経営者はここを、引き継ぎの優先順位として確認します。

直近2〜4週間分の日報を対話AIにまとめて読み込ませ、特定の担当者名にしか出てこない業務を表にし、担当者本人に手順が書けるか確認してもらい、書けなかった業務を引き継ぎの優先度が高いものとして経営者が確認する、4つの手順を示すフロー図

現場で見てきたこと

私が関わった会社では、作った後に面倒を見る人が決まっていなかったことがありました。社内資料が古くなったり、業務のルールが変わったりすると、AI が参照する情報も更新しないといけません。誰が運用するのかを決めずに導入すると、半年後には誰も使わなくなっている、ということが起こります。導入の時点で「この仕組みを誰が育てるか」まで考えておくのが大事だと思っています。

この日報の読み方も同じです。1回だけ表を作って終わりにすると、次に新しい業務が特定の人に偏り始めても気づけません。誰が、どのくらいの頻度でこの表を作り直すかを、最初に決めておく必要があります。

導入時につまずきやすいところ

1つ目は、日報の中身がそもそも薄いことです。 J-Net21は、日報を使えるツールとして定着させるために、日報の目的や書き方を丁寧に説明すること、フィードバックを欠かさず実施すること、効果が出るまで長期戦を覚悟することの3つを挙げています4。日々の記述が一言で終わっている状態では、対話AIにまとめさせても拾える情報がありません。

2つ目は、表を作って終わりにしてしまうことです。 特定の担当者名にしか出てこない業務が見つかっても、担当者本人に手順を書いてもらう工程まで進まなければ、ただの一覧表で終わります。

3つ目は、見つかった業務をすぐにマニュアル化しようとすることです。 白書では、多能工化に有効だった取組として「従業員スキルの可視化」が最も多く挙げられ、「業務マニュアルの作成・整備」はその次でした2。この記事では、それを踏まえて、まずは誰が何をできる・できないかを把握するところまでを終え、マニュアル化はその後の工程として分けて考えることを提案します。そうすることで、後戻りが少なくなります。

まとめと、明日できること

何を どのツールで 所要時間の目安 出典
直近2〜4週間分の日報を手元にそろえる 今使っている日報のファイル・ノートをそのまま使う すぐ
まとめて貼り、「特定の担当者名にしか出てこない業務・用語」を表にしてもらう ChatGPT・Claude・Google Gemini(いずれも無料プランあり) すぐ 567
表を担当者本人と共有し、「手順が書けるか」を1行ずつ埋めてもらう Notion AI(無料プランあり。AI機能は制限つき) 半日 8
書けなかった行を、引き継ぎの優先度が高い業務として確認する 上の表をそのまま使う(新しいツールは要らない) すぐ

ここまでは、今使っている日報と対話AIだけで始められます。表に残った「手順が書けない業務」をどう引き継ぐか、続ける仕組みまで作り込むのは、この先の話です。まずは、直近数週間分の日報を読み込ませてみるところから始めてみてください。

出典

出典

本文中の番号([1] など)は、下記の出典に対応しています。

  1. [1] 中小企業庁 2025年版中小企業白書 第2部第1章第2節「経営の透明性・開放性」 www.chusho.meti.go.jp ・2025年4月25日 公開 ・2026年9月19日 参照
  2. [2] 中小企業庁 2026年版中小企業白書 第2部第3章第2節「人材活用の取組」 www.chusho.meti.go.jp ・2026年4月24日 公開 ・2026年9月19日 参照
  3. [3] 独立行政法人中小企業基盤整備機構 J-Net21 ビジネスQ&A「『見える化』とはどういうことなのでしょうか?」 j-net21.smrj.go.jp ・2026年9月19日 参照
  4. [4] 独立行政法人中小企業基盤整備機構 J-Net21 経営ハンドブック「日報を上司と部下のコミュニケーションツールに昇華させる」 j-net21.smrj.go.jp ・2026年9月19日 参照
  5. [5] Aisurumon 外部ツールカタログ(chatgpt。一次情報: App Store ChatGPTアプリページ) apps.apple.com ・2026年9月3日 参照
  6. [6] Aisurumon 外部ツールカタログ(claude。一次情報: Anthropic Claude 料金ページ) claude.com ・2026年9月3日 参照
  7. [7] Aisurumon 外部ツールカタログ(google-gemini。一次情報: Google Gemini サブスクリプションページ) gemini.google ・2026年9月3日 参照
  8. [8] Aisurumon 外部ツールカタログ(notion-ai。一次情報: Notion 料金ページ) www.notion.com ・2026年9月3日 参照

よくある質問

Q. 日報から属人化を見つける方法は、公的な資料に基づいていますか

中小企業庁の白書やJ-Net21が示しているのは、属人化への取組状況や見える化の考え方までで、日報の記述内容から属人化を特定する具体的な手法そのものを扱った公的な資料は見当たりませんでした。この記事で紹介する手順は、それらの考え方をもとにAisurumonが提案する一つのやり方です。

Q. 特定の担当者名にしか出てこない業務が見つかったら、次に何をすればいいですか

その業務を担当者本人に見せ、手順を1行で書けるかどうかを確認してもらいます。手順が書けない業務ほど、その担当者がいなくなったときにノウハウの喪失や業務停滞につながるリスクが高い業務と考えられます。書き出した表は、引き継ぎの優先順位を決めるために使えます。

Q. 日報をまとめるのにどのAIツールを使えばいいですか

ChatGPT・Claude・Google Geminiはいずれも無料プランがあり、日報のテキストをまとめて貼って表を作らせる用途に使えます。担当者本人と表を共有して手順を書き込んでもらう段階では、Notion AIのように文書を共同編集できるツールも使えます。

この記事の監修者

末吉 孝臣

代表取締役・株式会社Omit

20年ほど Web や業務システムの開発と企業の DX 支援に携わり、現在は広島県福山市で株式会社Omit を経営。専任の IT 担当者がいない中小企業を中心に、現場の仕事を見ながら AI 導入や業務改善を現実的な形に落とし込む仕事をしています。

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