評価が「上司の印象」で決まる会社が、最初にやめられること
・読了目安 約6分
監修: 株式会社Omit 代表取締役 末吉 孝臣
この記事の要点
- 評価者自身の基準に任せると、同じ対象者でも評価がばらつくことがあります
- 評価の理由は、行動だけでなく状況と生じた効果も添えて具体的に記述します
- 上司は具体的な行動例と判断理由を示し、面談で認識を共有します
- 評価結果を共有し、こまめなフィードバックで評価をすり合わせます
「評価は結局、上司の印象で決まる」。こう受け取られる状態では、評価する側も、評価される側も、次に何を見直せばよいか分からなくなります。すぐに制度全体を作り直す必要があるとは限りません。まずは、評価の場面で何を根拠にしたのかを、本人と共有できる状態に近づけるところから始めます。
この記事では、評価制度の設計手順や評価項目の一覧には踏み込みません。印象だけで評価が決まったように見える構造と、今ある面談や評価シートで始められる小さな一歩を整理します。
この記事の結論
- 評価者自身の基準に任せると、同じ対象者でも評価者によるばらつきが生じます1。
- 評価の理由を伝えるときは、対象となる行動に、その状況と生じた効果を添えて具体的に記述します1。
- 自己評価と上司評価が異なる項目では、上司が具体的な行動例と判断理由を示し、面談で認識を共有する方法が案内されています2。
最初にやめられるのは、評価者だけが基準を持つこと、理由を示さないこと、評価結果を共有しないことです。評価の根拠を残し、本人とすり合わせることは、制度を大きく変える前でも始められます。
この記録は、評価を決めるためだけのメモではありません。上司と本人が、判断の前提を一緒に確かめるための材料にもなります。
なぜ「上司の印象」で決まったように見えるのか
労働政策研究・研修機構の論文は、評価者自身が持つ基準に任せる評価では、同じ評価対象者でも評価者ごとに評価がばらつくと整理しています。評価者の職務経験による見方の違いや、個人の選好の偏りが影響するためです1
ここで問題になるのは、上司が評価をすること自体ではありません。上司の中にだけある基準で判断し、その基準や理由が本人に示されないことです。評価される側から見れば、何を見られ、どの行動がどう受け取られたのかが分かりません。その状態では、次の仕事で何を変えればよいかも決めにくくなります。
同論文は、評価者に基準を提示する評価と、職場での具体的な行動に着目する尺度が望ましいとしています1。またJ-Net21は、評価項目と評価基準を明確かつ具体的に示すことが、従業員の納得性を高める要素だと説明しています3。
ただし、基準を書いた評価シートがあれば十分ということでもありません。J-Net21は、基準が明確でも、評価者によって運用がばらばらなら公平な評価はできないとしています3。書類の言葉と、日々の判断がつながっているかを確かめる必要があります。
最初にやめられる三つのこと
評価者だけが基準を持つこと
評価の基準が上司の中にだけあると、評価者が変わったときに判断も変わります。制度全体を見直す前に、今ある評価シートの一項目を選び、「どの具体的な行動を見たのか」を書き留めるところから始めます。
評価者に基準を提示する考え方と、具体的な行動に着目する考え方は、評価者任せの判断を減らすための手がかりになります1。最初から全項目を埋めようとせず、一つの評価場面で根拠を残せるかを確認します。
理由のない評価を伝えること
評価の結果だけを伝えても、判断に至った経過は分かりません。労働政策研究・研修機構の論文は、フィードバックでは、対象となる行動だけでなく、その行動が生じた状況と、生じた効果を併せて具体的に記述する必要があるとしています1。
例えば記録する順番を、「行動」「その状況」「生じた効果」としておくと、評価の理由を振り返る材料になります。これは評価項目を増やす話ではありません。すでに評価の根拠にしている出来事を、本人にも説明できる形にするための記録です。
評価結果を共有しないこと
厚生労働省の職業能力評価シートでは、自己評価と上司評価が異なる項目について、上司が具体的な行動例と判断理由を示したうえで、面談で認識を共有する方法を案内しています。必要に応じて、上司評価を修正することも示されています2
J-Net21も、人事評価は結果を出して終わりではなく、評価結果を従業員と共有することが重要だとしています。現時点でできること・できないこと、会社が今後期待すること、評価する行動を上司が伝え、こまめなフィードバックですり合わせる機会を増やす考え方です3
評価の結果を一方的に告げるのではなく、判断理由を示して認識を共有することが、次の評価までに見直す行動を具体的にする出発点になります。
面談の前に残しておきたい三つの材料
面談のために新しい制度を用意する前に、評価する側が次の材料を一つの評価について書き留めます。
- 具体的な行動:何をしたのか
- その状況:どのような場面で起きたのか
- 生じた効果:その行動によって何が生じたのか
この三つは、フィードバックで具体的に記述すべき要素として示されているものです1。面談では、自己評価と上司評価が異なる項目があれば、上司は行動例と判断理由を示します。そのうえで本人の認識を聞き、共有します2
ここで大切なのは、記録が上司のためだけのメモで終わらないことです。本人に説明できる記録になっているかを確かめます。評価の根拠が共有できれば、評価を受ける側も、次に何を見直すかを考える材料にできます。
つまずきやすいところ
基準だけを書いて、運用を任せきりにすることです。 J-Net21が示すとおり、基準が明確でも評価者ごとに運用が異なれば、公平な評価はできません3。評価する側が、同じ項目をどのような行動で判断したのかを残せるか、まず一項目で確かめます。
行動だけを書いて、状況と効果を書かないことです。 行動の記録だけでは、その行動をなぜ評価の根拠にしたのかを伝えにくくなります。行動、状況、効果を併せて具体的に記述します1。
面談を結果の通知だけで終えることです。 自己評価と上司評価が異なる項目では、具体的な行動例と判断理由を示し、認識を共有する方法が案内されています2。評価結果を共有し、こまめにすり合わせる機会を持つことも重要です3。
個別の人事評価で扱いに迷う場合は、社労士などの専門家や所轄の窓口へ確認してください。
まとめと、明日できること
| 何を | どのツールで | 所要時間の目安 | 出典 |
|---|---|---|---|
| 一件の評価について、具体的な行動・その状況・生じた効果を書き留める | 今使っている評価シートとメモ | すぐ | 1 |
| 自己評価と上司評価が異なる項目で、行動例と判断理由を用意する | 今使っている評価シートと面談メモ | 半日 | 2 |
| 面談で認識を共有し、評価結果も本人と共有する | 今使っている面談の場 | すぐ | 23 |
ここまでは、今ある評価シートと面談で始められます。評価制度を大きく変える前に、まず一つの判断について根拠を残し、本人と共有できるかを確かめてみてください。
出典
出典
本文中の番号([1] など)は、下記の出典に対応しています。
- [1] 独立行政法人労働政策研究・研修機構『日本労働研究雑誌』No.617 論文「人事評価の運用の最適化によるパフォーマンス・マネジメント」 www.jil.go.jp ・2012年5月25日 公開 ・2026年9月18日 参照
- [2] 厚生労働省「評価の方法について」(職業能力評価シート) www.mhlw.go.jp ・2026年9月18日 参照
- [3] 独立行政法人中小企業基盤整備機構 J-Net21 経営ハンドブック「人事評価制度と賃金制度の改善」 j-net21.smrj.go.jp ・2026年9月18日 参照
よくある質問
Q. なぜ上司によって評価が違うのですか
評価者自身の基準だけに任せると、同じ対象者でも評価が評価者ごとにばらつく可能性があります。評価者に基準を提示し、職場での具体的な行動に着目する尺度を使う考え方が示されています。
Q. 評価の判断理由はどう伝えればよいですか
対象となる行動に加え、その行動が生じた状況と生じた効果を具体的に記述します。自己評価と上司評価が異なる項目では、上司が具体的な行動例と判断理由を示し、面談で認識を共有する方法が案内されています。
Q. 評価結果は本人と共有すべきですか
評価結果を従業員と共有し、現時点でできること・できないことや会社が期待することを伝える重要性が示されています。こまめなフィードバックは、評価についてすり合わせる機会になります。
この記事の監修者
末吉 孝臣
代表取締役・株式会社Omit
20年ほど Web や業務システムの開発と企業の DX 支援に携わり、現在は広島県福山市で株式会社Omit を経営。専任の IT 担当者がいない中小企業を中心に、現場の仕事を見ながら AI 導入や業務改善を現実的な形に落とし込む仕事をしています。
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