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経営・戦略

組織づくりのコンサルを頼む前に、経営者が自分で確かめておきたいこと

・読了目安 約11分

監修: 株式会社Omit 代表取締役 末吉 孝臣

この記事の要点

  • 組織づくりを外部に頼む前に、経営者が自分で確かめたいのは「どの型の困りごとか」「今どう回しているか」「誰が仕組みを育てるか」の3点です
  • 厚生労働省の調査では、人材育成の問題点は「指導する人材が不足している」59.5%が最も多く、「育成しても辞めてしまう」54.7%が続きます
  • 経済産業省のローカルベンチマークは無料の「企業の健康診断」ツールで、経営者が一人で、書ける項目だけ埋めて始められます
  • 社内で感じている課題は、無料プランのあるChatGPTなどの対話AIに箇条書きで壁打ちさせ、固有名詞を伏せて言葉にしてから相談に臨めます
日本の中小企業の事務所の机。手書きの箇条書きが並ぶノートと付箋、奥にノートパソコンとホワイトボード。人物の顔は写さない

人が辞めた、新人が育たない、あの人が休むと仕事が止まる。こうした場面が続くと、外部のコンサルタントに頼む選択肢が頭に浮かびます。ただ、いざ相談の場で「何に困っているんですか」と聞かれると言葉に詰まり、返ってくる提案がどこか的外れに感じる。そういう話を、経営者の方からよく聞きます。この記事では、外部に頼む前に経営者が自分で確かめ、言葉にしておきたい論点を整理します。費用の目安や見積もりで確認する点は、組織づくり・人材育成を外部に頼む費用の目安と、頼む範囲の決め方に譲ります。

この記事の結論

先に3点お伝えします。

  1. 頼む前に確かめたいのは、「どの型の困りごとか」「今どう回しているか」「誰が仕組みを育てるか」の3点です。 この3点が言葉になっていないと、相談相手はあなたの会社ではなく「よくある会社」に向けた提案をするしかありません。
  2. 自社の状態は、公的な無料ツールで先に見られます。 経済産業省のローカルベンチマークは「企業の健康診断」と呼ばれるツールで、経営者が一人で、書ける項目だけ埋めて始めてよいとされています12
  3. 社内で感じている課題は、対話AIに箇条書きで壁打ちさせると言葉になります。 無料プランのあるChatGPT・Claude・Google Geminiに、思いつくまま書いた箇条書きを分類・言い換えさせ、固有名詞を伏せた一覧にしてから相談に臨む、という手順です345

順に見ていきます。

私の見方: 「何に困っているのか」「今どういう手順で仕事をしているのか」を整理してから、最後にツールを選びます。

「人材の課題は外に頼みたい」のに、頼む中身が決まっていない

中小企業庁の2025年版小規模企業白書によると、事業者が独力で対応することが難しいと考えている経営課題は、中規模企業・小規模事業者ともに「人材確保・人材育成」と回答した割合が最も高くなっています6。支援機関が事業者から相談される頻度が高い課題としても、「資金繰り改善」「販路の強化・開拓」と並んで「人材確保・人材育成」が挙がります6

一方で、同じ白書が支援機関を活用していない事業者に理由を尋ねると、最も多いのは「社内で完結できるため必要ない」でした6。「どのような支援機関があるのか分からない」「支援機関の得意分野や強みが分からない」と答えた事業者も存在します6。人材の課題は自社だけでは難しいのに、外の誰に何を頼めばいいかは見えていない。この2つの事実の間にあるのが、「頼む中身が言葉になっていない」という状態です。

では、社内では何が起きているのでしょうか。厚生労働省の令和6年度能力開発基本調査(常用労働者30人以上の事業所が対象)では、能力開発や人材育成に何らかの問題があるとする事業所が79.9%にのぼります7。問題点を複数回答で尋ねると、「指導する人材が不足している」が59.5%で最も高く、「人材を育成しても辞めてしまう」54.7%、「人材育成を行う時間がない」47.4%と続きます7。「人材育成の方法がわからない」は9.9%、「適切な教育訓練機関がない」は8.9%でした7

問題として最も多く挙がるのは「方法が分からない」ことではなく、「教える人と時間が足りない」ことです。もし御社もそうなら、外部に頼んで方法を教わっても、教える人と時間は増えません。頼むべきは「方法」ではなく、「今いる人で回る形をどう作るか」になります。

頼む前に、自分で確かめておきたい3つのこと

外部に頼む前に経営者が自分で確かめる3つのこと。どの型の困りごとか、今どう回しているか、誰が仕組みを育てるか。その下に、対話AIで箇条書きを言語化してから無料の窓口や見積もりに進む流れ

1. どの型の困りごとか

「組織がうまくいっていない」は、相談相手には伝わりません。困りごとを、離職・育成・属人化・評価・現場が見えない、のどれに近いかまで絞ります。自分で確かめる問いの例を、公的データに沿って挙げます。

  • 離職: この3年で採用した人のうち、今も残っているのは何割か。中小企業白書は、社内コミュニケーションが円滑な事業者の方が、直近3年間に採用した従業員の定着率「7割以上」の割合が高いことを示しています8。円滑でない関係は「経営陣と非管理職」だけでなく「部署内の管理職と非管理職」でも多く挙がっています8。辞めた人が誰と話せていなかったかを思い出してみてください
  • 育成: 新人に何を教えるかを決めた文書があるか。能力開発基本調査では、育成の方針を文書にした事業内職業能力開発計画を作成している企業は全体の5分の1で、従業員30〜49人の企業では13.3%、50〜99人では18.9%です7。無いのが普通なので、「無い」と言葉にすることが出発点になります
  • 属人化: その人が2週間休んだら止まる仕事がいくつあるか。中小企業白書では「業務の属人化・ブラックボックス化の防止」に取り組んでいる事業者は5〜6割で、白書は属人化した従業員の退職によるノウハウの喪失や業務停滞のリスクを指摘しています9
  • 評価: 評価の基準を社員に説明できるか。人事評価制度を設けている事業者は全体の約4割で、従業員30名超では過半数です8。設けていない理由で最も多いのは「経営者が全従業員の状況を把握している」でした8。社員が増えて把握しきれなくなった、と感じ始めているなら、そこが型です
  • 現場が見えない: 今日、誰が何をしていたかを翌朝までに知る手段があるか。日報や朝礼がその役目を果たしているかを見ます

型が1つに絞れないなら、「離職が一番で、その裏に評価への不満がありそうだ」のように順番を付けておくと、相談相手が最初に手を付ける場所を間違えにくくなります。

2. 今どう回しているか

型が決まったら、その仕事を今どういう手順で回しているかを書き出します。新人が入ったら誰が何を教えているか、面談は誰がいつ行っているか。「決まっていない」「その場の判断」も立派な答えです。

書き出すと、外部に頼まなくても直せるところが見つかります。口頭で教えている内容を手順書の下書きにする作業は、自社で始められます。進め方はマニュアルが使われない理由と、属人化の棚卸しから始める方法で扱っています。逆に、「誰が何をいつまでに教えるか」を決めて評価や面談とつなぐ設計は、社内の人間関係から離れた立場の人に頼む価値があるところです。

3. 誰が仕組みを育てるか

外部の人は、いつか去ります。作ってもらった仕組みを、その後に社内の誰が回し、直していくのか。中小企業白書では、人材育成の取組を増やしていない事業者が挙げる問題点は「育成に充てる時間的余裕がない」「指導する人材が足りない」の回答割合が高くなっています8。同じ白書は、取組を増やした事業者の方が、増やしていない事業者より採用後の定着率が3割以上と答えた割合が高いことも示しています8。白書自身が「示唆される」と書いている相関ですが、仕組みを続けられるかどうかが、結果を分ける場所として見られています。

頼む前に「終わった後は誰が担当か」を決めておくと、要望が「その人が続けられる形で作ってほしい」と具体的になります。

自社の状態を、無料のツールで数値にしてみる

経済産業省が提供するローカルベンチマーク(通称ロカベン)は、企業の経営状態を把握する「企業の健康診断」ツールで、企業・経営者は無料で自社の現状把握や経営分析ができます1。シートは、財務面の「6つの指標」、「商流・業務フロー」、非財務面の「4つの視点」の3枚組です1。4つの視点とは「経営者」「事業」「企業を取り巻く環境・関係者」「内部管理体制」で、内部管理体制の欄には、事業計画が従業員と共有されているか、人材育成の取組はどうなっているかなどを書きます2

中小企業庁の解説では、ロカベンは経営者が一人で取り組んでよく、すべての項目を埋める必要はなく、書けるところだけ書けばよいとされています2。1回で終わりではなく、何度も取り組むものだとも書かれています2。相談に持っていくなら、まず「4つの視点」の1枚だけを埋めてみてください。「内部管理体制」の欄に人材育成と情報共有の現状を書くだけで、相談相手はあなたの会社の輪郭をつかめます。

対話AIに壁打ちさせて、感覚を一覧にする

書き出そうとしても、最初は「なんとなくうまくいっていない」という感覚しか出てこないことがあります。そこで使えるのが対話AIです。ChatGPT・Claude・Google Geminiはいずれも無料プランがあり、文章の下書きや要約、整理に使えます345。箇条書きを渡して「分類して」「言い換えて」と頼む使い方も、その延長です。

手順は3段階です。

  1. 思いつくまま箇条書きにする。 「最近、若い人が続けて辞めた」「新人教育は毎回、手が空いている人がやっている」「見積もりはAさんしか作れない」。整えずに書きます
  2. 分類と言い換えを頼む。 「この箇条書きを、離職・育成・属人化・評価・現場把握のどれに近いか分類して。事実と推測を分けて、推測には印を付けて」と頼みます。「相談相手に聞くべき質問を10個」と続けてもよいでしょう
  3. 一覧にして持っていく。 返ってきた分類を、自分の言葉で直して紙1枚にします。「ここは違う」と直す作業そのものが言語化です

一つだけ守ってほしいことがあります。社員の名前、取引先名、金額といった固有名詞は伏せて入力し、使うサービスの利用規約とプライバシーポリシーを先に確認してください。個人情報や機密情報をそのまま貼らないのが前提です。考え方は生成AIに何を入力していいか、中小企業が守るべき情報の扱い方にまとめています。

この一覧は、コンサルタントに渡す前に無料の窓口で試せます。国が47都道府県に設置したよろず支援拠点は、経営上のあらゆる相談に何度でも無料で対応しています10。組織づくりを専門に扱うと明示されているわけではありませんが、「この一覧を見て、外に頼むべき範囲はどこか」と聞く相手として使えます10。お住まいの地域の商工会議所や商工会にも、同種の相談窓口があります。

現場で見てきたこと

3つ目の「誰が仕組みを育てるか」は、頼む前には見落としがちです。

私が関わった会社では、作った後に面倒を見る人が決まっていなかったことがありました。社内資料が古くなったり、業務のルールが変わったりすると、AIが参照する情報も更新しないといけません。誰が運用するのかを決めずに導入すると、半年後には誰も使わなくなっている、ということが起こります。導入の時点で「この仕組みを誰が育てるか」まで考えておくのが大事だと思っています。

組織の仕組みを外部に作ってもらう場合も、同じことが起こります。だから、頼む前に決めておくのです。

頼む前につまずきやすいところ

1つ目は、「なんとなく」のまま相談に行くことです。 「組織を良くしたい」と伝えると、相談相手は一般論で答えるしかありません。型と手順を紙1枚にしてから行ってください。

2つ目は、自社でできる言語化まで頼んでしまうことです。 ここを外に出すと、社内に「自社の課題を自分の言葉で言える人」が育ちません。

3つ目は、費用から入ることです。 頼む範囲が決まる前に金額を比べても、契約同士を比べられません。費用の目安と見積もりで確認する点は、組織づくり・人材育成を外部に頼む費用の目安と、頼む範囲の決め方で扱っています。

なお、評価制度や労働時間の扱いなど労務に関わる部分は、社会保険労務士など専門家に確認してから進めてください。

まとめと、明日できること

何を どのツールで 所要時間の目安 出典
社内で感じている課題を思いつくまま箇条書きにし、「離職・育成・属人化・評価・現場把握のどれか分類して。事実と推測を分けて」と頼む ChatGPT・Claude・Google Gemini(いずれも無料プランあり)。固有名詞は伏せる すぐ 345
ローカルベンチマークの「4つの視点」のシートを、書けるところだけ埋める 経済産業省のローカルベンチマーク(無料) 半日 12
上の一覧とシートを持って、「外に頼むべき範囲はどこか」を相談する お住まいの都道府県のよろず支援拠点(何度でも無料) 半日 10
「型・今の回し方・終わった後に誰が育てるか」を紙1枚にまとめ、見積もりの前に相手へ渡す 上の一覧をそのまま使う(新しいツールは要らない) すぐ

ここまでは自分でできます。課題を型に分け、今の回し方を書き出し、誰が仕組みを育てるかを決めてから相談に行く。そのうえで、仕組みの設計と定着まで一緒に作る相手が要るなら、この記事の下にある相談窓口から声をかけてください。

出典

  1. 経済産業省「ローカルベンチマーク(通称:ロカベン)」(2026年1月16日 公開)(2026年9月24日 参照)    

  2. 中小企業庁 ミラサポplus「マンガでわかる『ローカルベンチマーク』」(2021年4月15日 公開)(2026年9月24日 参照)     

  3. ChatGPT 公式サイト(Aisurumon 外部ツールカタログ chatgpt)(2026年9月3日 参照)   

  4. Claude 公式サイト(Aisurumon 外部ツールカタログ claude)(2026年9月24日 参照)   

  5. Google Gemini 公式サイト(Aisurumon 外部ツールカタログ google-gemini)(2026年9月3日 参照)   

  6. 中小企業庁 2025年版小規模企業白書 第2部第2章第1節「中小企業・小規模事業者における支援機関の活用状況と効果」(2025年4月25日 公開)(2026年9月24日 参照)    

  7. 厚生労働省 令和6年度「能力開発基本調査」結果の概要(2025年6月27日 公開)(2026年9月24日 参照)    

  8. 中小企業庁 2025年版中小企業白書 第2部第1章第4節「人材戦略」(2025年4月25日 公開)(2026年9月24日 参照)      

  9. 中小企業庁 2025年版中小企業白書 第2部第1章第2節「経営の透明性・開放性」(2025年4月25日 公開)(2026年9月24日 参照) 

  10. よろず支援拠点全国本部(独立行政法人中小企業基盤整備機構)(2026年9月24日 参照)   

出典

本文中の番号([1] など)は、下記の出典に対応しています。

  1. [1] 中小企業庁 2025年版小規模企業白書 第2部第2章第1節「中小企業・小規模事業者における支援機関の活用状況と効果」 www.chusho.meti.go.jp ・2025年4月25日 公開 ・2026年9月24日 参照
  2. [2] 厚生労働省 令和6年度「能力開発基本調査」結果の概要 www.mhlw.go.jp ・2025年6月27日 公開 ・2026年9月24日 参照
  3. [3] 中小企業庁 2025年版中小企業白書 第2部第1章第2節「経営の透明性・開放性」 www.chusho.meti.go.jp ・2025年4月25日 公開 ・2026年9月24日 参照
  4. [4] 中小企業庁 2025年版中小企業白書 第2部第1章第4節「人材戦略」 www.chusho.meti.go.jp ・2025年4月25日 公開 ・2026年9月24日 参照
  5. [5] 経済産業省「ローカルベンチマーク(通称:ロカベン)」 www.meti.go.jp ・2026年1月16日 公開 ・2026年9月24日 参照
  6. [6] 中小企業庁 ミラサポplus「マンガでわかる『ローカルベンチマーク』」 mirasapo-plus.go.jp ・2021年4月15日 公開 ・2026年9月24日 参照
  7. [7] よろず支援拠点全国本部(独立行政法人中小企業基盤整備機構) yorozu.smrj.go.jp ・2026年9月24日 参照
  8. [8] ChatGPT 公式サイト(Aisurumon 外部ツールカタログ chatgpt) chatgpt.com ・2026年9月3日 参照
  9. [9] Claude 公式サイト(Aisurumon 外部ツールカタログ claude) claude.com ・2026年9月24日 参照
  10. [10] Google Gemini 公式サイト(Aisurumon 外部ツールカタログ google-gemini) gemini.google.com ・2026年9月3日 参照

よくある質問

Q. 組織づくりのコンサルタントに相談する前に、何を準備すればいいですか

自社の困りごとがどの型か、今その仕事をどう回しているか、外部が去った後に誰が仕組みを育てるかの3点を、自分の言葉で紙1枚に書いておくことです。中小企業庁の白書では、独力で対応が難しい経営課題として人材確保・人材育成を挙げる事業者が最も多い一方、支援機関を使わない理由では社内で完結できるためという回答が最も多く、頼む中身が定まっていない状態がうかがえます。

Q. 組織の課題を自分で数値で確かめる方法はありますか

経済産業省が提供するローカルベンチマークが使えます。企業の健康診断と呼ばれる無料のツールで、財務の6つの指標と、商流・業務フロー、経営者・事業・環境・関係者・内部管理体制という4つの視点の3枚のシートで構成されています。経営者が一人で取り組んでよく、すべての項目を埋める必要はないとされています。

Q. 社内の課題をChatGPTに相談しても大丈夫ですか

課題を箇条書きにして分類や言い換えを頼む使い方なら、無料プランのあるChatGPT・Claude・Google Geminiで始められます。ただし社員の名前や取引先名などの固有名詞は伏せ、利用するサービスの利用規約とプライバシーポリシーを先に確認してください。個人情報や機密情報をそのまま貼らないことが前提です。

Q. 組織づくりの相談を無料でできる窓口はありますか

国が47都道府県に設置したよろず支援拠点は、経営上のあらゆる相談に何度でも無料で対応します。組織づくりや人材育成を専門に扱うと明示されているわけではありませんが、課題を言葉にする最初の相談先として使えます。お住まいの地域の商工会議所や商工会にも同種の窓口があります。

この記事の監修者

末吉 孝臣

代表取締役・株式会社Omit

20年ほど Web や業務システムの開発と企業の DX 支援に携わり、現在は広島県福山市で株式会社Omit を経営。専任の IT 担当者がいない中小企業を中心に、現場の仕事を見ながら AI 導入や業務改善を現実的な形に落とし込む仕事をしています。

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